弁護士会の交通事故研修での事例報告

平成29年9月5日、福岡市中央区赤坂の中央市民センターにて、福岡県弁護士会の交通事故専門研修が行われました。参加者は弁護士のみです。

 

テーマは醜状障害、すなわち、交通事故により顔などに負った傷の痕が消えないままのこってしまったという後遺障害に関するものでした。

 

この醜状障害において特に裁判や示談交渉で争点となることが多いのが、醜状障害に伴う逸失利益です。

一般に、後遺障害に伴う逸失利益というのは、事故による後遺症のために、収入が減少したことの補償を求めるものです。

 

例えば、運転手が後遺症により足が思うように動かなくなり運転ができなくなった、料理人が後遺症により手が効かなくなり料理ができなくなったといったように、後遺症により事故前のように仕事ができなくなり、それにより収入が減少した、職を失ったといった場合に求める補償です。

 

ところが、俳優、モデルのような職業上、容姿が重要視される方であれば別として、一般の職業に就いておられる方が、顔に傷痕がのこったからといって、必ずしも収入が減少する、職を失うといったことがあるわけではありません。

そのため、一般の後遺障害と異なり、醜状障害の場合には、この逸失利益の補償を求めることができるかが争点になることが多いのです。

 

ところで、この醜状障害の扱われ方に関しては、男性の場合と女性の場合とで違いが生じると思いますか?「男は顔じゃない。」というお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

 

この点については、自賠責保険の取扱上、従来、同じ大きさの顔の傷跡でも、男性より女性の方が上位の後遺障害等級とされていたのですが、その取扱いの違いの程度が男女平等に反し憲法違反であるという判決がなされた後に見直しがされ、現在では、男女平等の取扱いになっています。

 

ただし、これはあくまで自賠責保険の取扱いのみであって、裁判実務においては、現在でも、同じ大きさの顔の傷跡であれば、女性の方が重く、男性の方が軽く取り扱われる傾向がまだ厳然として存在します。

 

この研修において私が報告を担当した事案も、男性の顔に傷跡がのこったケースについてでした。

 

示談交渉において、加害者側(支払側)の代理人弁護士は、被害者が男性であることと、男性が就いていた職業の内容からして、顔に傷跡がのこったからといって収入減少は生じないといって、その補償はしないと回答してきました。

そのため、その補償を求めて、裁判所に提訴しました(なお、裁判での争点は他にもありますが、ここでは省かせて頂きます。)。

 

裁判においても、加害者側の代理人弁護士は同じように主張しましたが、私は、そのような主張は実態が反映されていないことについて強く反論しました。

結果として、裁判所から、被害者男性の顔の傷跡による逸失利益を認める和解案が示され、双方がそれを受け容れて和解が成立し解決ができました。

 

男性の場合には、顔に傷跡がのこるという後遺障害があっても、裁判所において逸失利益の補償が否定されることが少なくないため、これが肯定された担当案件について、今回の研修において報告をさせて頂くことになりました。

 

私が、このような解決を得られた要因は、被害者の職業における顔の傷の影響の実態をきちんと聴取し、それをどうのように立証すれば裁判官に理解してもらえるかを考えたことにあると思いますので、そうしたことの重要性等について研修においてお話させて頂きました。