労災事故と企業の損害賠償責任

平成29年10月6日、当法律事務所の弁護士、楠田宏と田中亮一が、福岡県中小企業振興センターにて、セミナーを開催しました。

タイトルは「ある日突然、訴えられる!?使用者賠償責任対策セミナー」です。

当日は、生命保険会社の方や税理士の先生、地元の企業の方にご参加いただき、私たちが取り扱ってきた事件を素材にして、労災事故と企業の損害賠償責任について、社会保険労務士の先生と共同して講演を行いました。

労災事故とは、労働者が仕事中にお亡くなりになったり、お怪我を負ったりすることをいいます。このとき、労働者を雇っている企業にも様々な責任が生じることがあります。

労災事故と聞くと、まず思いつくのが労災補償です。

そして、労災保険に加入していれば安心だと思っていらっしゃる経営者の方も少なくありません。

私も、ご相談者から「労災が出てるのになんで訴えられなきゃいけないんですか。」と言われたことがあります。

労災の補償を受けたにもかかわらず、企業が訴えられることがあるのは、企業が労働者に対して、「安全配慮義務」を負うからです。

企業が従業員の安全に配慮すべき義務に違反していると判断された場合には、労災補償を上回る損害を賠償しなければならないのです。

たとえば、労働者が使う機械の整備が十分でなかったり、安全に作業する教育が十分でなかったりすると安全配慮義務違反となり、企業は損害賠償責任を負うことになります。

安全配慮義務違反に基づく損害賠償義務を負うのは、企業に過失がある場合ですが、従業員が仕事中に亡くなったり怪我をしたりした場合、企業が安全配慮義務違反による責任を免れるのは決して簡単なことではありません。

そして、従業員がお亡くなりになったり、後遺症が残ってしまったりした場合、その賠償額は高額になり、企業が維持できなくなることもあるのです。

また、近年は、長時間労働やパワーハラスメントによる精神疾患を理由とする損害賠償請求訴訟も注目を集めています。

精神疾患を理由とする労災請求は20年前に比べると30倍以上になっており、そのうち自殺にまで至ってしまったケースも増加しています。

一般に労災事故が起こりやすいのは製造業や建設業だと考えられますが、精神疾患を理由とするものについては、どのような業種においても起こりえます。

企業は、従業員を守るべき存在ではあり、労災事故が発生しないよう注意すべきです。

しかし、労災事故が発生してしまうと、その影響は計り知れません。

「うちの会社は大丈夫」「わが社の従業員に限って会社を訴えるはずがない」というのは通用しません。

少なくとも使用者賠責保険には加入しておきましょう。

また、労災事故が発生したときには、早めに弁護士に相談することをお勧めします。